EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2008.02.22
2007年4月13日のコラムで、REACH規則の、「第三者の代理人(a third party representative)」と域外製造業者のための「唯一の代理人(only representative)」の2つの代理人制度野相違について説明していますが、「唯一の代理人」を使う場合の留意点に考えてみました。
REACH規則ではEU域外の企業は登録ができません。輸出先のEU輸入者がその義務を負うか、EU域外の製造業者が、EU域内の企業を「唯一の代理人」を任命して、登録に限らずREACH規則の義務などを順守の代理をさせることになります。
「唯一の代理人」の任命は、輸入者がREACH規則が要求する登録時の情報や評価時へのレスポンスをする技術的知識が少ないと思われる場合や、輸入者が十分REACH規則への対応ができる技術的知識をもっていれば、特別な契約がなければ同じ物質の購入先を自由に選択でき、さらに企業秘密などを提供することも出てきますので、必要になると考えられます。
ここで、留意しなければならないことは、REACH規則の第8条2項の、「代理人は、本規則に基づく輸入者の他のあらゆる義務も遵守しなければならない」の内容です。すなわち、「唯一の代理人」の法的な立場は、EU域外の企業の代理人ではなく、輸入者の代理人であることです。さらに、REACH規則の第8条2項では、「唯一の代理人」は次の情報を利用可能にして、かつ最新状態に維持することが要求されています。
一般的には「代理人」は、依頼人と1対1の関係で契約、任命するものと考えられています。しかし、欧州化学品庁のFAQ1)では、一般的な考えと少し異なり、REACH規則の「輸入者の代理人」の表現通りに運用されることになっています。この意味するところは、同じ物質について、EU域外の複数企業が「唯一の代理人」と契約した場合、その物質の登録トン数は、これら複数企業のトン数の合計になることです。登録で要求される情報が、個々の企業で同じであれば問題がないのですが、もしこの合計トン数が次のトン数域となる場合は、個々の企業の登録では要求されなかった試験情報を取得することが必要になります。
例えば、同じ既存化学物質を年間6t輸出している2社が、「唯一の代理人」と契約したとします。1社だけですと、年間1〜10tの既存化学物質の場合、附属書IIIで定義されるCMR、PBT、vPvB物質でなければ、基本的な附属書VIIの物理化学的特性の情報だけの提出ですみます。ところが、このようなケースでは、2社合わせると12tになりますので、付属書VII、VIIIで定められる毒性学的および生態毒性学的情報が必要になります。1社では予定していない化学物質の試験費用が発生することになります。
また、「唯一の代理人」には、EU域外の企業の営業秘密情報「輸入量および販売先顧客情報」が集まることになります。
このように運用することに対しては、一部の加盟国から異議が出されており2)、変更される可能性がありますが、域外の製造業者にとっては、「唯一の代理人」を選任する場合、「唯一の代理人」の活動状況を確認して、問題を起こさないように注意することが必要と考えます。
(林 譲)