EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
2018.11.09
残留性有機汚染物質を国際的に規制する「ストックホルム条約(以降「POPs条約」)1)」は、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連地球ミット」において採択された「環境と開発に関するリオ宣言」第15原則に掲げられた予防的アプローチ(Precautionary Approach)に留意し、人の健康と保護および環境の保護を図ることを目的として2004年5月に発効した条約です。
POPs条約は、環境中での残留性、生物蓄積性、人や環境への毒性が高く、長距離移動が懸念されるポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDTなどの残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の製造および使用の廃絶(elimination)や制限(restriction)、その意図的でない生成による放出の削減などを規制するものです。
条約対象物質への追加について検討する検討委員会(POPRC)は、加盟国の31人の専門家により構成されており、加盟国から提案された物質について、スクリーニング、危険性に関する詳細検討(リスクプロファイル)、リスク管理に関する評価の検討の3段階のプロセスを経て、締約国会議(COP:Conference of Parties)に勧告します。
条約の第8条では以下のように規定しています。
条約の規定に基づき規制対象物質の検討を行う「第14回残留性有機汚染物質検討委員会2)(以降「POPRC14」と略称)」が2018年9月17日~21日にイタリアのローマで実施されました。
以下にPOPRC14において、審議決定された内容3)を紹介します。
<検討経過とその結果>
欧州連合から提案されていた、フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤などが主要な用途であるPFOAとその塩およびPFOA関連物質については、POPRC13において以下の決定4)がなされていました。
「リスク管理に関する評価およびPOPs条約上の位置付け(製造・使用などの「廃絶」または「制限」、並びに「意図的でない生成」)について検討し、特定の用途についての適用除外項目、POPs条約上の位置付けおよびPFOA関連物質の対象範囲について、今後さらなる情報を収集し、次回会合(POPRC14)まで議論を重ねることを決定。特に、PFOA関連物質については、日本から、規制措置を行ううえで対象物質を特定すべきであるとの意見を述べ、今後、さらなる情報収集を行うことを決定。」
上記に従いPOPRC14においてPFOAとその塩およびPFOA関連物質について、リスク管理に関する評価およびPOPs条約において、製造・使用等の禁止(廃絶)の必要性について検討が行われ、以下の決定がなされました。
「医療品製造を目的とするペルフルオロオクタンブロミド(PFOB)の製造のためのペルフルオロオクタンヨージド(PFOI)の使用、およびすでに搭載されている泡消火薬剤の使用を適用除外として、廃絶対象物質(附属書A)に追加することをCOPに勧告することを決定」
<検討経過と結果>
ノルウェーから提案されていた、主要な用途は、前項と同様にフッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤などであるPFHxSとその塩およびPFHxS関連物質についてリスクプロファイルを審議し、残留性、濃縮性、長距離移動性および毒性などを検討し、高次捕食動物への生態系影響などからPFHxSが重大な悪影響をもたらす恐れがあるとの結論に達し、次回のPOPRC15においてリスク管理に関する評価を検討する段階に進めることが決定されました。
これに関連し、経済産業省では以下の情報を発信しています5)。
『2019年9月―10月のPOPRC第15回会合において「リスク管理の評価」を行うことになりました。早ければ、この第15回会合で、当該物質の条約附属書への追加を締約国会議に勧告することを決定し、2021年春の締約国会議で、当該物質の世界的な製造・輸出入・使用の禁止等を決定する可能性があります。当該物質の代替品又は代替物質が存在しない用途については、厳格な審議を経て、禁止措置の適用除外が合意される可能性もあります。
これを受けて、日本では、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に基づき、早ければ2022年にも国内での製造・輸入・使用等を禁止することになります。』
<検討経過と結果>
主要用途が半導体用のエッチング剤、レジストであるPFOSとその塩およびPFOSFの代替についての評価を行い、附属書B(制限)の第三部第5項および第6項に基づき、認めることのできる目的および個別の適用除外の見直しが行われ、COPに勧告することが決定されました。
なお、附属書B第三部第5項および第6項の内容は以下のとおりです。
第5項
締約国会議は、利用可能な科学的、技術的、環境および経済的情報に基づき、多様な認めることができる目的および特定された除外に対し、関連物質の必要な評価を継続すべきである。評価には以下が含まれるべきである。
第6項
前項に言及される評価は、遅くとも2015年まで実施され、以降4年ごとに締約国会議の正式会合で報告されるべきである。
締約国会議で決定された場合、各加盟国は当該対象物質について製造、使用などを規制することになります。
わが国においては、これまでに化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)第1種特定化学物質に指定され6)規制されてきましたが、今後も同様措置がとられるものと思われます。
(瀧山 森雄)
1)http://chm.pops.int/
2)http://www.pops.int/TheConvention/POPsReviewCommittee/Meetings/POPRC14/Overview/tabid/7398/Default.aspx
3)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/pops/POPRC14_press_release.pdf
4)http://www.meti.go.jp/press/2017/10/20171024002/20171024002.html
5)http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/pops_5.html
6)/well/reach/column/091127.html