EUの化学物質関連規則を統合するREACH規則について紹介
CLP規則では、EUに上市される全ての物質や混合物について、EUの製造者または輸入者が分類を行い、危険有害性を有する物質(混合物)に該当する場合は、表示を行なう義務が課せられます。
また、EUの製造者または輸入者がREACH登録の一部として既に提出している物質や、既に分類・表示の届出が行なわれている物質以外で、CLP規則で「危険な物質」と分類される場合には、化学品を上市するEUの製造者または輸入者は、取り扱い数量にかかわらず(年間1t未満でも)物質ごとに分類・表示の結果を欧州化学品庁(ECHA)に届出る義務があります〔CLP規則第39条、40条(1)〕。
分類・表示の届出については「有害な物質」と分類された物質(混合物)であり、なおかつ既にそのEUの輸入者(製造者)が登録あるいは届出などをしていない場合に必要となります。
また、CLP規則では以下の項目を届け出る必要があります。ご質問の判断の材料としたデータについては、以下の項目を満たすために必要に応じて記載することになると思われます。
(1)届出者の所属、連絡先等
(2)物質の特定
各物質について、それを特定することができるのに十分な情報を提供する必要があります。
(3)物質の分類
(4)未分類の危険有害区分がある場合、「データがない」「信頼できるデータがない」「信頼できるデータから分類に該当しない」のいずれかを示す
(5)該当する場合、固有の濃度限界値またはM-ファクター
(6)ラベル要素(絵表示)、注意喚起語、危険有害情報
危険な物質または混合物の分類は、1)物理・化学的性質、2)ヒトの健康に及ぼす影響の性質、3)環境に及ぼす影響の性質を評価すること、などにより行われます。ご質問の「判断の材料となったデータ」とはそのようなデータと思われます。それらのデータは、REACH登録の際に提出する技術一式文書へ記述します。しかし現時点でCLP規則ではデータ提出を義務付ける規定は無いようです。
ただし、分類、表示インベントリに含まれる分類と異なる分類の場合は、根拠を提出する必要があります。
当然ですが、CLP第5条に要求される分類の根拠として利用した情報は順法の証拠として管理しておくことは必要です。
一方、SDSの提供義務はCLP規則ではなく、REACH規則第31条に規定されています。REACHでは物質または混合物が危険な物質(混合物)に分類される場合には、取り扱う数量に関係なく、川下企業へのSDS提供が義務付けられています。
危険な物質または混合物の分類は、「危険な物質の分類、包装および表示に関する指令(67/548/EEC)」、「危険な調剤の分類、包装および表示に関する指令(1999/45/EC)」により規定されていましたが、CLP規則の発効に伴い最終的には(67/548/EEC)と(1999/45/EC)は廃止され、CLP規則の分類基準に統合されることとなっています。
CLP規則は2009年1月20日に発効しており、現在は移行期間中です。物質は2010年12月1日、混合物は2015年6月1日から、CLP規則で規定された分類に統合される予定です。また、移行期間中は物質、混合物それぞれに移行手順が違いますので十分に理解をして対応する必要があります。移行スケジュールなどの詳細は2月12日付けのコラム(REACH規則付属書II改定案について)およびQ204をご参照ください。