欧州委員会は2011年5月20日、REACH規則の制限に関して附属書XVIIを改正する委員会規則(EU)No494/2011を官報公示しました。
制限とは物質に人や環境に容認できないリスクがあり、EU全域で対処が必要と判断された時は、物質の製造、使用または上市するときに制限条件をつけたり、禁止する措置が採られたりすることです。
今回の改正で、あらたに宝飾品およびロウ材へのカドミウムの使用が制限され、ロウ材は以下の通りの制限条件となりました。
ロウ材の制限(8項)
- ロウ材に0.01wt%以上含有するカドミウムの使用禁止
- カドミウム(金属Cd)を0.01wt%以上含有するロウ材の上市禁止
- ここでいうロウ付けとは、450℃を超える温度で接合するもの
適用除外(9項)
- 防衛または宇宙用製品および安全上の理由で使用されるロウ材には適用されない
この制限は2011年12月10日から適用されます(施行日は当初2012年1月10日でしたが、直後の2011年5月21日に公示された修正官報により2011年12月10日に修正されています)。
- EU域外の成形品のロウ付け
今回のロウ材の制限は、官報の前文(6項)にありますようにロウ付けを専門的に行う職業人や宝飾品の製作を趣味とする人たちが、ロウ付け作業の工程中にカドミウムを含むヒュームに曝露される恐れがあるからです。また、カドミウムを含んだ宝飾品の使用者は皮膚との接触を通じて影響を受けます。特に子供がなめたりすることが考えられますので宝飾品への使用禁止となっています。
ロウ材の制限条件は、カドミウムを0.01wt%以上含むロウ材の使用、上市の禁止ですので、EU域外でロウ付けされたものも対象となると思われます。また現地で補修の際はロウ材として使用できないことになります。
この制限で銀ロウなどが制限対象となる可能性がありますので、該当するロウ材の使用は避け代替品の使用や開発が必要だと思われます。
- 安全上の理由
適用除外の「安全上の理由」は附属書XVIIの随所にみられる表現ですが、防衛または宇宙用製品に適用除外を認めると同レベルでの理由で、製品の性能・機能と安全性の確保のためどうしてもカドミウムを0.01wt%以上含有するロウ材を使用しなければならない場合に限られると思われます。
油漏れ防止のための配管材料や接続方式は、該当するロウ付け以外にもいろいろな方法があると考えられますし、油漏れのリスクはロウ付部だけでなく、配管系統全体で施工状態を含めていろいろな要因があります。
単に油圧配管からの油漏れのおそれがあることだけでは適用除外となるとは考えにくいと思われます。この点に関しましては当局へ確認することをお奨めします。
参考
REACHコラム「REACH規則附属書ⅩⅦ修正に関連する委員会規則(No494/2011)」(2011年6月17日掲載)