電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2008.04.11
2008年4月1日に欧州司法裁判所は、2005年10月13日のDeca BDEの除外決定(2005/717/EC注1)を 欧州議会およびデンマーク王国の提訴を認めて、無効とする判決を出しました(注2)。
この判決により、RoHS指令のAnnexの9aが削除され、2008年7月1日以降はDeca BDEは含有制限(0.1wt%)対象となります。適用は各加盟国の国内法の改正が必要です。
判決文のポイントをまとめてみます。
今回の事案は欧州委員会が制定した拘束力のある法令の取消訴訟 (Actions for Annulment)で、適法性を審査することを求めて提訴されたものです。欧州司法裁判所は事案の法令について、重大な手続要件違反やほかの法令違反があれば、制定時にまで遡り無効を宣言することができます。
今回の事案は重要な事案とされ、長官が裁判長を務め13人の判事が担当する大法廷(Grand Chamber)で判決がでました。
EU委員会は2005年10月13日にDeca BDEの除外を決定し、10月15日に官報(Official Journal of the European Union)で告示しました。この決定に対する取消訴訟ですが、経緯をまとめてみます。
裁判の論点は、直接的にはDeca BDEのリスク評価そのものではなく、手続き問題です。第2パッケージ案件と言われたDeca BDEの除外は、提案当初から手続きが理解できない動きがありました。経緯を追ってみます。
欧州議会の2005年7月6日に採択した決議、デンマーク王国やスウェーデンが主張しているのは、RoHS指令第5条(1b)の適用に関する事項です。
「第5条 科学技術上の進歩への適応 1.以下のような目的のため、付属書を科学技術上の進歩に適応させる修正は、本指令第7条2項に規定される手続に従って採択される。 (b)第4条1項に言及されている物質や材料をデザインの変更により除去したり、同物質や材料を必要としない代替品で製品の材料や構成部品を置き換えたりすることが、技術的、科学的見地からみて実践不可能な場合、或いはまた代替が環境や人の健康、或いは消費者の安全に対しもたらす悪影響が、同分野での代替による便益を上回る場合に、電気・電子機器の材料や構成部品を第4条1項の適用から免除する。」(JETRO ユーロトレンド 2003.5)
この代替物質があるかどうかが大きな問題であり、ベルギー王国は2007年2月6日にdeca BDEの電子機器のあらゆる用途に関して、議論の的の難燃剤に代わる安全性の高い代替物質が存在するとの調査報告書を提出しています。
論点は代替物質が存在するのに、適用除外(使える)を認めたのは、法令違反であるとの主張でした。
BDEの規制は北欧を中心に厳しいものがあり、判決前でも商業用Deca BDE中のNona BDEの規制(注4)が示され、事実上PBDEは全廃を余儀なくなれていました。今回の判決は手続き上の問題と考えれば、再除外もあり得ますが、アメリカでもDeca BDEを含むPBDE規制が厳しくなっていますので、リスクマネジメントの視点ではPBDE全廃になると思えます。
(松浦 徹也)