電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2010.01.08
前回に続いて各国のRoHS法関連の動向を解説します。今回はタイとアメリカの動向を解説します。中国同様に大きな動きがあります。
1.タイRoHS法
2008年5月26日の工業省通達である「危険物質を含有する可能性のある電気電子機器の規格の規定-一部の種類の危険物質の使用制限-」がタイRoHS法と言われるものです。
(1)対象製品
対象製品はEU RoHS指令と同じ10製品群です。
(2)特定有害化学物質
新品の電気・電子機器には、EU RoHS指令と同じ鉛、水銀、カドミウム、6価クロム、ポリ臭素化ビフェニル(PBB)、およびポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)を含有させてはならないとしています。
最大許容濃度は、EU RoHS指令と同じでカドミウム0.01%、その他は0.1%で、測定方法はタイ工業規格MorOorKor.2388に定められた方法(IEC62321に準拠と思われる)としています。
除外はEU RoHS指令の2006年10月14日までの修正(追加)の29項目と同じで、Deca-BDEは9aとして収載されています。
(3)規格適合表示
規格に従っていることを示す技術書類には以下に関する証明が要求されます。
提出には2つの様式があります。
(a)様式A(規定に適合していることを示す信頼性ある社内システム)
(b)様式B(規定に適合していることを示す信頼性ある製品/部品の物理的な成分に関する一般情報)
様式Aと様式Bは選択(片方または両方)します。様式Bのみを選択した場合は業務手順に従ったこと示す信頼性ある書類を示し、材料宣言書の評価が行われ、その書類の信頼性の調査が行われたことを証明しなければなりません。
生産者は規格への適合を示す全ての書類を保管し、少なくとも4年ごとの頻度で評価検査機関の検査を受けなければなりません。
2.アメリカの動き
(1)H.R.2420(EDEE Act)
(a)目的
2009年5月14日にTSCA(Toxic Substances Control Act)の修正法として、電気製品環境設計法「Environmental Design of Electrical Equipment Act (EDEE Act)」が下院に提案されました。EDEE Actは連邦RoHS法の位置づけで、アメリカの業界は、規制が強化されることに必ずしも反対はしていませんが、はんだの鉛フリーに対する危惧を示す動きはあります。*1
*1
http://blogs.indium.com/blog/tim-jensen/0/0/what-happens-if-us-rohs-happens
法案では施行日は2010年7月1日となっています。
(b)特定有害物質
EDEE Actの特定有害化学物質は、EU RoHS指令と同じで鉛、水銀、カドミウム、6価クロム、PBBおよびPBDEです。
最大許容濃度もカドミウムが0.01wt%(100ppm)、その他が0.1wt%(1,000ppm)です。 濃度は重量比で、その分母はEU RoHS指令と同じ均質物質(homogeneous material)で、その定義も「機械的に別々に分離できない均質材料」であり、EU RoHS指令と同じになっています。
(c)EU RoHS指令との違い
EDEE Actについては2009年7月31日付けコラムも合わせて参照ください。
(2)AB218 〔修正the Electronic Waste Recycling Law (EWRL) 〕
AB218はカリフォルニア州法のElectronic Waste Recycling Act of 2003の修正案です。
カリフォルニア州法で4インチ以上のディスプレー(商品限定)から、すべての家電製品を含むように定義を改正することも大きな変更点です。
"electronic equipment"
dependent on electric currents or electromagnetic fields to work properly or that is a device for the generation, transfer, or measurement of electric currents or fields;
that falls within the scope of Article 2 of Directive 2002/96/EC;
that is designed for use with a voltage rating that does not exceed 1,000 volts for alternating current and 1,500 volts for direct current;
an that falls within the scope of Article 2.1 of the RoHS directive.
BILL HISTORYを見ますと、2008年11月30日以降は新たな動きはないようです。*2*3
*2
http://www.leginfo.ca.gov/pub/07-08/bill/asm/ab_0201-0250/ab_218_bill_20080506_amended_sen_v97.pdf
*3
http://www.leginfo.ca.gov/pub/07-08/bill/asm/ab_0201-0250/ab_218_bill_20081130_history.html
EU域外国もEU RoHSをベースにして、法規制を強化しようとしています。AB218では、対象はEU RoHS指令案の修正意見に出ている「すべての製品」を対象とする動きもあります。
その他、EU RoHS指令に類似した、 2009年5月のシップリサイクル条約などのよう規制は広がりを見せていますが、基本的にはEU RoHS指令への対応をしていれば、EU域外国の規制にも多くは対応できるものと思われます。今後はEU RoHS指令の改定の動きを注視することが重要になってきます。
(松浦徹也)