電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2012.02.24
2011年7月1日にEU RoHS指令(DIRECTIVE 2011/65/EU)が公布され、2013年1月3日に現行RoHS指令(DIRECTIVE 2002/95/EC)が廃止されます。2014年7月22日からCat 8およびCat 9製品も非含有の義務が生じることになります。
これらの期限が迫る中、FAQが遅れるなどでさまざまな論議が生じています〔以降、現行RoHS指令をRoHS(I)、改正RoHS指令をRoHS(II)とします〕。
適用範囲は第2条で11製品群が定義されています。各製品群の詳細品目は附属書などで記述されていなく、現行WEEE指令およびRoHS(I)と同様に、自社の製品がどのカテゴリーになるかは自ら判断することになります。
また、RoHS(II)で用語の「電気電子機器」の定義が改正されています。
RoHS(I)の定義:「電気電子機器(electrical and electronic equipment)」または「EEE」とは、正しく作動するために電流または電磁界に依存する機器であって、指令2002/96/EC(WEEE)の付属書IAに定めるカテゴリーに属するもの。さらに交流1000ボルト、直流1500ボルトを超えない定格電圧で使用するように設計され、そのような電流と電磁界を発生、伝導、測定するための機器を意味する。
RoHS(II)の定義:RoHS(I)の定義に「依存とは、少なくとも1つの意図している機能を充足するために電流、電磁場を必要とする」が追加されました。
RoHS(I)では、指令の用語の定義にはありませんでしたが、FAQで「依存(dependent)」とは、機器が電流または電磁界に依存せざるを得ないことを意味する」とし「電流が供給されない時には機器が基本(主要)機能を実行できないことを意味する」の解説がされました。dependentの解釈が広がったことになり、適用製品が拡大されることになります。
このdependentの定義の変更により、RoHS(I)でグレー商品例として取り上げられて、主要機能に電気が不要としてScopeに入らないとされたテディベア(熊のぬいぐるみ)や電子メロディ電報などがRoHS(II)ではScopeに入ると思われます。
製品拡大について2011年11月29日に第1回Stakeholder meetingが開催され、拡大リストが示されました。
【Category 1】Large household appliances
Gas hob, grill with electrical function:ガスレンジ・グリル
Gas oven, wood or oil burning Aga with clock/timer:ガスオーブン〔Agaは(商標)台所用大型コンロ〕
Gas water heaters with electrical function
【Category 4】Consumer equipment
Reclining beds:リクライニングベッド
Reclining chairs:リクライニングチェア など
新たに対象となるCategory 11(その他)としては、日本では理解できない品目が入っています。気になる品目と論点を示します。
2012年2月21日に開催の第2回Stakeholder meetingの結果が待たれます。
大型固定据付機器はScopeの外になりますが、固定据付の定義は第3条で示されています。要点は次です。
大型の定義はRoHS(II)にはありません。2011年11月29日のERAによる「RoHS impact assessment」で大型設備の解釈が示されています。
What could be LSFI?
Railway infrastructure (鉄道用インフラ設備)
Airport (空港用設備)
Large office building(大型オフィスビル)など
What may not be LSFI?
Domestic dwellings(家庭用住宅)
Small offices (サイズは?)
Petrol station(ガソリンスタンド)など
大型ビルに設置された大型設備は、ビルとして扱うのではなく、その設備が対象となります。リストには「電気自動ドア」「エレベーター」「空港の滑走路の照明機器」「ケーブルTVネットワーク」のような家庭用電気電子機器とは異なるものが示されています。
現在、WEEE指令の改正のための審議がされており、2012年1月19日に議会第2読会で採択された修正案では、大型の定義として50cm以上としています。
これまでのWEEE指令やRoHS指令で考えていた大型設備のイメージと異なっており、戸惑いが広がっています。
第16条2項に「EU官報にて通達された整合規格に則り、第4条規定の順守を確認するための試験もしくは対応がされた、もしくは評価がされた原料については、本指令に適合しているものとみなすこととする」と記述されています。
サプライヤーからの非含有証明による順守証明ができる条項です。
川下企業から川中企業へ非含有証明、順法測定データの要求が多くなることが懸念されます。ただ、ここで示された整合規格は現時点では特定されていません。2011年10月21日にEUの標準規格を策定する機構の「CEN、CENELEC、ETSI」にCEマーキング用の規格作成指示(Mandate)が出されました。
指示事項(DESCRIPTION OF THE MANDATED WORK)に、「均質材料」レベルで制限値を計算することが基本としつつも、最終製品の試験では十分でないことも考慮して、コンプライアンス証明のために、単独あるいは組み合わせで使用する文書として次をあげています。
順法測定法はEN/IEC62321と思いますが、コンプライアンス証明手順が規格にまとめられようとしています。サプライチェーンでの非含有証明の授受が現状と異なることもあり得るので、気になるところです。
測定法の論点としては、三(六)価クロム化成被膜表面処理中の六価クロム量の測定があります。前記のRoHS impact assessmentでも、論議されていますが、三(六)価クロム化成処理の基準は従来では単位面積あたりの溶出量でした。このため、RoHS(I)(II)は含有量規制で、溶出量と含有量の関係が論議されてきました。
一般的には三(六)価クロム化成被膜処理は多層コーティングですが第2回コンサルテーション文書では単層として扱うことや中国の順法方法についても触れています。
三(六)価クロム化成処理の測定法はIEC62321では、多層被膜を均質物質として扱っています。中国でも、IEC62321の翻訳規格であるGB/T26125-2011 付録B(金属試料の無色及び着色防食被膜中の六価クロムの確認試験)を採用しています。
中国RoHSが先取りしているとも思えますが、RoHS(II)第4条2項で表面処理の最大許容濃度は細則を作るとしていますので、気になるところです。
このように論点が多くあり、今年中には発行されるといわれているFAQが待たれています。
(松浦 徹也)