ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2016.12.16

シンガポールRoHS法の改定動向

シンガポール環境水資源省は2016年6月1日に「環境保護管理法1)の第76条による「別表3の有害物質の輸入、輸出、使用および管理」のために、別表2(SECOND SCHEDULE:Control of hazardous substances PartI Hazardous Substances)の改正政令(S 263/2016)」(シンガポールRoHS法)2)を公示しました。
 環境保護管理法は、大気汚染管理、水質汚染管理、騒音管理や土壌汚染管理などとともに有害物質管理を要求しています。
 有害物質は、別表2のPartI(有害物質管理表)の項目1にリストされており、項目2に除外要件が記載されています。シンガポールRoHS法は、この有害物質管理表に特定電気電子機器(EEE)への特定有害物質の含有制限の要件を入れるものです。
 EU REACH規則の附属書XVIIの制限と同じイメージです。
 シンガポールRoHS法の施行日は2017年6月1日です。

1.対象製品(特定電気電子機器)

対象製品は次の家庭用(designed for household use)の7製品群ですが、用語はNoteで定義され、除外要件も示されています。

  • 1)エアコン(air-conditioner)
     中古エアコン、冷却塔、冷却器、産業用あるいは特定用途の大規模エアコンは除かれます。
  • 2)薄型テレビ(flat panel display television)
     11インチ以上のテレビが対象で、中古テレビ、自動車に装備されたテレビ、建物やバス停留所の広告用テレビ、産業用あるいは特定用途に設計されたテレビは除かれます。
  • 3)携帯電話(mobile phone)
     中古携帯電話、携帯型の双方向無線機、衛星電話及び特定用途に設計された携帯電話は除かれます。
  • 4)ファブレット(phablet)(「Phone」と「Tablet」とを合わせた造語)
     中古ファブレット及び特定用途に設計されたファブレットは除かれます。
  • 5)ポータブルコンピュータ(portable computer)
     中古ポータブルコンピュータ、自動車に装備されたポータブルコンピュータ(カーピュータ)及び特定用途に設計されたポータブルコンピュータは除かれます。
     なお、コンピュータの定義では、自動タイプライター・植字機、ハンドヘルド計算器、非プログラム可能・データメモリ機能がない場合は除かれます。
  • 6)冷蔵庫(refrigerator)
     中古冷蔵庫、ワインキャビネット、携帯クーリングボックス、チラーまたは輸送用冷蔵箱、産業用または特定用途に設計された冷蔵庫は除かれます。
  • 7)洗濯機(washing machine)
     中古洗濯機、産業用あるいは特定用途に設計された洗濯機は除かれます。
2.特定有害物質

特定有害物質と最大許容濃度はEU RoHS指令と同じ6物質群です。

  • 1)カドミウム及びその化合物 0.01重量%
  • 2)六価クロム 0.1重量%
  • 3)鉛及びその化合物 0.1重量%
  • 4)水銀及びその化合物 0.1重量%
  • 5)Polybrominated biphenyls(PBB) 0.1重量%
  • 6)Polybrominated diphenyl ethers(PBDEs) 0.1重量%

濃度の分母は、「均質物質(homogeneous material)」でEU RoHS指令と同じ定義となっています。

3.用途の除外

環境保護管理法の別表2のPartI(有害物質管理表)とEU RoHS(II)指令の除外と対比してみますと若干の差異があります。
 物質は別表2のPartI(有害物質管理表)の項目1に物質名のアルファベット順で収載されます。

項目1 物質名 項目2 除外要件(意訳) EU RoHS(II)指令の除外要件
EEE中のカドミウムとその化合物 ・均質物質中で0.01重量%を超えない(not exceeding)ように管理されている ・附属書II
・電気接点中のカドミウム及びその化合物 ・附属書III 8(b)
・フィルターガラス及び反射標準物質用ガラス中のカドミウム ・附属書III 13(b)
・ガラス上のエナメル用の印刷インクに含まれるカドミウム ・附属書III 21
・100dB(A)以上の音圧レベルを備えた高性能の拡声器の中で使用する変換器中の音声コイルに直接設置される導電体を接合するための電気的か機械的なはんだとしてのカドミウム合金 ・附属書III 30
 Pack9では削除提案
・アルミニウム結合酸化ベリリウムに使用される厚膜ペースト中のカドミウムおよびカドミウム酸化物 ・附属書III 38
 Pack9では削除提案
EEE中の六価クロム ・均質物質中で0.1重量%を超えないように管理されている ・附属書II
・吸収型冷蔵庫の炭素鋼冷却システムの防錆用に冷却剤中の重量比0.75%を超えない6価クロム ・附属書III 9
EEE中の鉛及びその化合物 ・均質物質中で0.1重量%を超えないように管理されている ・附属書II
・陰極線管(CRT)のガラス中に含まれる鉛 ・附属書III 5(a)
 Pack9では削除提案
・機械加工用途の鋼鉄および亜鉛めっき鋼中の合金成分として重量比0.35%を超えない鉛 ・附属書III 6(a)
・アルミニウム合金元素としての重量比0.4%を超えない鉛 ・附属書III 6(b)
・銅合金元素としての重量比4%を超えない鉛 ・附属書III 6(c)
・高融解温度型はんだ(重量比85%以上の鉛を含む鉛合金)中の鉛 ・附属書III 7(a)
・以下の電気電子部品中の鉛
(a)ガラスまたはセラミック(コンデンサーの誘導体セラミックを除く)
(b)ガラスまたはセラミック母材化合物
・附属書III 7(c)-I
 Pack9では若干表現が異なる
・定格電圧AC 125VまたはDC 250V以上用のキャパシタ中の誘電セラミック中の鉛 ・附属書III 7(c)-II
・暖房、換気、空調あるいは冷却用の冷媒を含んでいる圧縮機の軸受胴あるいはブッシュ中の鉛 ・附属書III 9(b)
・光学用ホワイトガラス中の鉛 ・附属書III 13(a)
・フィルターガラス及び反射標準物質用ガラスに含まれる鉛 ・附属書III 13(b)
・ガラス上のエナメル用の印刷インクに含まれる鉛 ・附属書III 21
・次のはんだ中の鉛
(a)ICフリップチップパッケージ内の半導体ダイとキャリアの電気結合 ・附属書III 15
(b)セラミック多層コンデンサの円形で平面配置の機械加工のスルーホールの接合 ・附属書III 24
(c)電力トランスの中で細い銅線(直径100μmを超過しない)の接合 ・附属書III 33
 Pack9では削除提案
・水銀フリーフラット蛍光灯の材料の接合材中の鉛 ・附属書III 31
 Pack9では削除提案
・構造要素の中で使用される表面電界ディスプレー中の酸化鉛 ・附属書III 25
 Pack9では削除提案
・クリスタルガラス中の鉛(Lead bound) ・附属書III 29
 若干の要件が異なる
・サーメット型トリマーポテンシオメーターの素子中の鉛 ・附属書III 34
・ほう酸亜鉛ガラス体ベースの高電圧ダイオードのめっき層中の鉛 ・附属書III 37
EEE中の水銀及びその化合物 ・均質物質中で0.1重量%を超えないように管理されている ・附属書II
・一般用途以外の冷陰極蛍光ランプと外部電極蛍光ランプ中の以下の値を超えない水銀
(a)長さ500mmを超えないランプ
 3.5mgを超えない
・附属書III 3(a)
(b)長さ500mm以上1,500mmを超えないランプ
 5mgを超えない
・附属書III 3(b)
(c)長さ1,500mmを超えるランプ
 13mgを超えない
・附属書III 3(c)
EEE中のPBB ・均質物質中で0.1重量%を超えないように管理されている ・附属書II
EEE中のPBDE ・均質物質中で0.1重量%を超えないように管理されている ・附属書II
4.WEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment)施策との関係

EU、韓国やインドなどのRoHS法では、リサイクル法と一体運用されています。シンガポールRoHS法は有害化学物質の規制であり、中古製品は適用外などインドRoHSなどの制定背景とは少し違います。
 シンガポールの廃棄物量は、2015年は8,420トン/日で1970年の1,260トン/日より大幅な増加していますが、60%以上リサイクル3)しています。WEEEについては、プラスチックと金属の回収が中心となっています。
 WEEEの回収義務はランプと電池とともに、公共回収システム利用の他に、各社の自主的な対応4)を取り入れています。
 ICT(Information and Communication Technology)機器(各種コンピュータ、携帯電話、コンピュータ・携帯電話用電池やキーボード、モデム、モニター、マウス、ドッキングステーション、ハードディスク、プリント基板、充電器などの周辺機器およびアクセサリ)は、SS587-2013(Management of end-of-life ICT equipment)で管理が要求されています。
 SS587は、寿命の終わりのICTについて、「再使用」「修理」「再製品化」「部品取り出し(サルベージ)」「マテリアルリサイクル」「信頼できる処分」の手順を定めています。
 SS587は、持続可能な管理システム標準であり、その枠組みは、他の確立された国際的な管理システム標準(例えば、ISO14001環境管理)と整合し、Plan-Do-Check-Actの継続的改善アプローチに基づいています。
 シンガポールは技術力が高く、廃棄寸前の中古電気電子機器の輸入が、近隣諸国より少ないことで、シンガポールRoHS法は特徴的になっていると思われます。

(松浦 徹也)

1)http://statutes.agc.gov.sg/aol/search/display/view.w3p;page=0;query=Id%3A%227045afd8-86ea-4cf3-bcbc-34de7adcc26b%22%20Status%3Ainforce;rec=0
2)http://statutes.agc.gov.sg/aol/download/0/0/pdf/binaryFile/pdfFile.pdf?CompId:86d659e4-ccc3-4f3d-8a29-437d29785ec4
3)http://www.nea.gov.sg/energy-waste/waste-management/waste-statistics-and-overall-recycling
4)http://www.nea.gov.sg/energy-waste/3rs/e-waste-lamp-battery-recycling/e-waste-recycling

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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