ここが知りたいRoHS指令

ここが知りたいRoHS指令

電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介

2017.03.24

RoHS指令附属書IIIの適用除外用途改正案のWTOへの通知

欧州委員会(以降「EC」)は、2017年2月10日にRoHS指令(2011/65/EU)附属書IIIの適用除外用途を改正する委員会指令案1)を世界貿易機関(WTO)に通知しました。
 通知された改正案は、附属書IIIに収載されている39の適用除外用途を変更するもので、2017年5月頃に採択される見込みです。
 今回の附属書III39の見直しについては、2014年4月に最終報告書2)が公表されたPack 4プロジェクトに基づき委員会委任指令案3)がECから提示されていましたが、2015年5月に欧州議会から反対が表明4)されたため、報告書の見直しが求められ改めてPack10プロジェクトが実施され、2016年6月に最終報告書5)が公表されていました。
 上記の経過につきましては、2015年10月9日および2016年6月10日の本欄コラムに記載されています。

以下にWTOに通知された委員会指令案の概要をご紹介します。

通知の詳細

説明メモ(EXPLANATORY MEMORANDUM)

1. 委員会委任法の内容

本委員会委任法は、科学と技術の進歩を採用する目的で、カドミウムを含んでいる特定のアプリケーションの除外に関する電気電子機器中の特定な有害物質の使用制限に関する欧州議会と理事会の指令2011/65/EU(RoHS(II))の附属書IIIを修正するものである。

RoHS(II)は第4条の規定で電気電子機器中に特定有害物質の使用を制限している。
 制限物質は、附属書IIにリストされている10物質で、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭素化ビフェニルおよびポリ臭素化ジフェニルエーテルの6物質の制限は既に執行中である。フタル酸ビス(DEHP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジブチル(DBP)およびフタル酸ジイソブチル(DIBP)の4物質は2019年7月22日から適用される。附属書IIIおよびIVにはRoHS(II)第4条(1)の物質制限から除外されている特定アプリケーションの電気電子機器の材料および部品がリストされている。
 第5条は附属書III、IVに科学と技術の進歩を採用するための(除外の追加、見直し、修正および廃止)規定が設けてある。 第5条(1)(a)に従い、そのような追加がREACH規則によりもたらされる環境と健康保護を弱体化させない場合、そして以下のいずれかの条件が満たされる場合にのみ除外は附属書IIIおよびIVに追加される。

  • 附属書IIにリストされている材料、物質を要求しない設計変更または材料、部品への削除、代替が科学的に技術的に不可能である。
  • 代替品の信頼性が確実でない。
  • 代替に起因する環境、健康および消費者安全の総合的な負の影響が総合的な環境、健康および消費者安全の便益を上回りそうである。

更に、第5条(1)にはECは、特定アプリケーション向けの材料、部品を第20条に従い委任法により附属書III、IVに追加すべきことを規定している。第5条(3)と附属書Vは除外の許可、見直しおよび廃止のための手順を確立している。

2. 委員会委任指令案の採択前のコンサルテーション

RoHS(II)が公布されて以降、ECは経済主体から附属書IIIおよびIVに従った除外の新規追加および見直しについて多数の要求を受領していた。
 現在の附属書III除外39は照明およびディスプレイ用途に特定の色彩変換LED中にカドミウムの使用を許可している。ECは2012年12月に附属書IIIの除外39の見直しの申請および関連するディスプレイ中のカドミウム量子ドットに対する除外申請を2013年5月に受け取った。委員会サービスは上記2つの申請について共通の評価を実施することを決定した。除外39は当時の時点での除外期限日は2014年7月1日であったが、RoHS指令(第5条(5))にしたがいECによる見直し申請が行われるまで除外適用が継続される。2012年、2013年の除外申請にしたがい、ECは2015年1月に委任指令を採択した。しかし欧州議会は2015年5月20日の決議においてECの評価以降行われてきた市場開発において特定のカドミウムフリーの量子ドット装置が2015年に利用可能になるということを主な理由とし委員会委任指令に反対した。その結果、ECはあらためて再評価を実施し2016年6月に最終報告書を提出した。
 量子ドットはその他の競合するテクノロジーのように近い将来多くのアプリケーションにおいて現在の色彩変換設計を置換えることが期待されるテクノロジーである。
 2016年6月からの科学と技術評価は、色全体の見地から高性能なディスプレイ中のカドミウムベースの量子ドットの使用は、現状の市場における主要な代替可能なテクノロジーであるインジウムリン化合物と比較して低エネルギー消費であるため積極的な影響を及ぼす。そのため、委員会は、量子ドットアプリケーション中のカドミウムの代替品に起因する環境、健康および消費者安全の総合的な負の影響が総合的な環境、健康および消費者安全の便益を上回りそうであると結論づけた。そのため第5条(1)(a)第3基準に照らして、ディスプレイのスクリーン面積1mm2あたり0.2μg以下の制限されたセレン化カドミウムの使用は現状で正当化される。現行の適用可能な除外と比較して新規の除外は更に制限的である。更なる低閾値が許可され、セレン化カドミウム(関連するアプリケーションに実際に使用されている無機化合物)の使用だけが除外され、アプリケーションはもっと正確に定義される。
 急速な技術進歩とこの分野の非常にダイナミックな市場の出現により、インジウムリン化合物および可能性あるその他の新興テクノロジーがカドミウムフリーディスプレイの急速な性能強化を導くことを示唆している。それ故に、上記を考慮しEUの官報に委員会委任指令が公示されてから2年間という短期の除外期間を認めることが正当化される。この短かい期間は除外の見直し要求のためのRoHS(II)第5条の18ケ月のデッドラインとして与えられる最短の期間である。それはまたイノベーションのすべての不利な影響、特に同等なカドミウムフリー代替品の開発を回避することを意図している。

3. 委任指令の法的要素

委員会委任指令は、第4条(1)からの除外を許可している。特定アプリケーション中のカドミウムの使用のため指令2011/65/EUの附属書IIIにリストされている。
 委員会委任指令の目的は人の健康および環境の保護および電気電子装置の分野における内部市場の機能を確実にするための関連規定を近似化することである。
 これは規定にしたがいRoHS(II)の条件下および附属書IIIおよびIVに基づき科学と技術の進歩を採用するために確立されている手順に従い特定のアプリケーションに対する他の禁止された物質の使用を認めることによりなされる。

要求はEU予算に影響しない。

委任指令案の本文

第1条
 指令2011/65/EU附属書IIIは本指令の附属書に規定されるとおりに修正される。

第2条

  1. 加盟国は遅くとも本指令の発効日の12ケ月後までに本指令にしたがう必要な法律、規則および行政規定を採用し発行しなければならない。加盟国はそれらの規定のテキストを欧州委員会に通知しなければならない。
    加盟国は、本指令の発効日の12ケ月+1日後から本指令を適用しなければならない。

    加盟国は、それらの規定を採択する時は、本指令の参照を含んでいるか広報時に参照を伴っていなければならない。加盟国はそれらの参照をどのようにするかを決定しなければならない。
  2. 加盟国は、本指令によりカバーされる分野に採択している国内法の主要な規定のテキストを委員会に通知しなければならない。

第3条
 本指令は、EU官報で公示されてから20日目に発効する。

第4条
 本指令は加盟国に通知される。

委員会委任指令附属書
ディスプレイシステムに使用するためのカラー変換LED中のカドミウムの除外に関する欧州議会と理事会の指令2011/65/EU附属書IIIに科学と技術を採用するための修正

指令2011/65/EUの附属書IIIの39は以下に置換えられる。

内容(英文) 有効期限
39 Cadmium selenide in downshifting cadmium-based semiconductor nanocrystal quantum dots for use in display lighting applications(< 0.2 μg Cd per mm2 of display screen area)

ディスプレイ照明用に使用する低カドミウム系半導体ナノ結晶量子ドット中のセレン化カドミウム(ディスプレイ面積1平方ミリメートルあたり< 0.2 μg Cd)
Expires for all categories on[two years after the publication of the Delegated Directive in the Official Journal]

すべてのカテゴリーに対する期限[官報にて委任指令の公示後2年間]

(注)上表中の和文は筆者訳である。

1)http://ec.europa.eu/growth/tools-databases/tbt/en/search/?tbtaction=search.detail&Country_I
D=EU&num=452&dspLang=en&basdatedeb=&basdatefin=&baspays=&basnotifnum=&basnotifnum2=
&bastypepays=ANY&baskeywords=2011%2F65%2FEU

2)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_IX/20140422_RoHS2_Evaluation_E
x_Requests_2013-1-5_final.pdf

3)http://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-5851-2015-INIT/en/pdf
  http://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-5851-2015-ADD-1/en/pdf
4)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/RoHS_Pack_10/RoHS_Ex_Project_Descri
ption_Pack_10.pdf

5)http://rohs.exemptions.oeko.info/fileadmin/user_upload/reports/20160602_Final_Report_RoHS_P
ack_10_Cd_QDs.pdf

(瀧山 森雄)

当解説は筆者の知見、認識に基づいてのものであり、特定の会社、公式機関の見解等を代弁するものではありません。法規制解釈のための参考情報です。 法規制の内容は各国の公式文書で確認し、弁護士等の法律専門家に判断によるなど最終的な判断は読者の責任で行ってください。

情報提供:一般法人 東京都中小企業診断士協会

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