電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2017.09.29
EU RoHS指令では附属書IIIおよび附属書IVで適用除外用途が定められています。この適用除外用途は、産業界等からの申請に基づき、欧州委員会(EC)が新規追加や削除、更新等の見直し手続きを適宜実施しています。
本コラムでは、読者の皆様方の関心の高い附属書IIIに既存適用除外用途の更新に関する最近の動きを整理します。
附属書IIIに収載済で2016年7月21日に有効期限が設定されていた適用除外用途のうち、早めに更新申請が提出された3種の適用除外用途(9(b)、13(a)、13(b))については、調査プロジェクト(パック7)が実施され、すでに改正案について、コラム「RoHS指令附属書IIIの3種の適用除外用途の改正案のWTO通告」でも取り上げていました。
ECは、これら3種の適用除外用途(9(b)、13(a)、13(b))について附属書IIIを改正する3つの委員会委任指令1)2)3)を6月16日に官報公布しました。改正内容は加盟国の国内法の制定期限である2018年7月6日から適用されることになります。
なお、附属書IIIの改正内容については、改正案段階と同様のため、詳細は上記コラムをご確認ください。
附属書IIIに収載済で2016年7月21日に有効期限が設定されていた29種の適用除外用途(パック9)は2016年6月に最終報告書が公表されていましたが、いまだに決定には至っておらず、継続して有効な状況です。
ECは9月19日に、29種のうち鉛に関する8種の適用除外用途(6(a)4)、6(b)5)、6(c)6)、7(a)7)、7(c)-I8)、18(b)9)、2410)、3411))の改正案を公表し、意見募集が開始されました。いずれもパック9の調査プロジェクト報告書の勧告から、内容および期限が変更されています。変更後の内容や期限は、パック9の調査プロジェクト報告書に対する業界団体からの書簡で示された業界団体の意見が多く採用されているようです。業界団体の書簡については、コラム「これまでのRoHS指令適用除外用途検討スケジュール」をご確認ください。
なお、期限については、勧告では「カテゴリー1~7、10」に対する期限が2019年7月21日に設定されている項目もありましたが、2016年7月22日から起算して有効期限の上限(5年間)である2021年7月21日が設定されています。ただし、「6(b)-II」のみ公布後3年間と期限が限定されています。
本改正案はいずれも官報公布の20日後に施行され、施行日から1年後までに加盟国の国内法に反映され、その翌日から適用される予定となっています。
附属書III No | 適用除外用途 | ||
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現状 | 改正案 | 内容 | 有効期限 |
6(a) | 6(a) | 機械加工用途の鋼材および亜鉛めっき鋼中に合金元素として含まれる0.35重量%までの鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
6(a)-I | 機械加工用途の鋼材中の合金元素として含まれる0.35重量%までの鉛とホットディップ溶融亜鉛めっき鋼中に含まれる0.2重量%までの鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10 |
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6(b) | 6(b) | アルミニウムに合金元素として含まれる0.4重量%までの鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
6(b)-I | 鉛含有アルミニウムスクラップのリサイクルに由来するアルミニウムに合金元素として含まれる0.4重量%までの鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10 |
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6(b)-II | 機械加工用途のアルミニウムに合金元素として含まれる0.4重量%までの鉛 | 改正委任指令公布の3年後 ・カテゴリー1~7、10 |
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6(c) | 6(c) | 銅合金中の4重量%までの鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10 ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
7(a) | 7(a) | 高融点はんだ中の鉛(鉛系合金に含まれる85重量%以上の鉛) | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10(附属書IIIの24項に該当する用途を除く) ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
7(c)-I | 7(c)-I | コンデンサ中の誘電セラミッ以外のガラスまたはセラミック中に鉛を含む電気電子部品(圧電素子等)、およびガラスまたはセラミックの化合物中に鉛を含む電気電子部品 | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10(附属書IIIの34項に該当する用途を除く) ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
18(b) | 18(b) | 日焼け用ランプとして使用され、BSP(BaSi2O5:Pb)等の蛍光体を含む放電ランプの蛍光粉末中の活性剤としての1重量%以下の鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
18(b)-I | 日焼け用機器や医療用光線療法機器(附属書IVの34項に該当する用途を除く)としてしようされ、BSP(BaSi2O5:Pb)等の蛍光体を含む放電ランプの蛍光粉末中の活性剤としての1重量%以下の鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー5 |
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24 | 24 | 機械加工通し穴つき円盤状および平面状アレイセラミック多層コンデンサへのはんだ付けに用いられるはんだ中の鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10 ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
34 | 34 | サーメットを主とするトリマー電位差計構成部品中の鉛 | 2021年7月21日 ・カテゴリー1~7、10 ・カテゴリー8(体外診断用機器除く)、 9(産業用監視制御機器除く) 2023年7月21日 ・カテゴリー8(体外診断用機器) 2024年7月21日 ・カテゴリー9(産業用監視制御機器) ・カテゴリー11 |
8月21日に3種の適用除外用途に関する新たな調査プロジェクト(パック13)の実施12)が発表されました。3種のうち2種は鉛に関する適用除外用途の新規追加ですが、残りの1種は附属書IIIに収載済で2017年12月31日に期限を迎えることになっている蛍光ランプ中の水銀に関する適用除外用途(1(g))の更新に関する内容です。
今後ステークホルダーからの意見募集等を経て、2018年3月に報告書が公表される見込みです。
このように本来2016年7月21日に有効期限を迎えるはずであった適用除外用途のうち、産業界から更新申請が提出されたパック7については、見直し結果が2018年7月から適用されます。また改正案が公表されたパック9については、WTOへの通知などの諸手続きもあるため、官報公布までには半年程度かかることから、実際に適用されるのは、2019年になるものと想定されます。それまでの間は従来通りの適用除外用途が有効となります。
(井上 晋一)
1)13(b)
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9)18(b)
10)24
11)34
12)パック13の調査開始アナウンス