電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
RoHS(II)指令で均質物質について、第3条20項で「均質物質とは、全体が単一成分の材料、または、ねじを外す、切断、破砕、粉砕および研磨プロセスのような機械的な手段で解体したり、異なる材料にできない材料の組合せで構成される材料を意味する。」と定義されています。
RoHS(II)指令のガイダンス(Standard application format and guidance document for RoHS exemption requests on the basis of Article 5(8) Directive 2011/65/EU)1)の中で、均質物質として、半導体パッケージを例示しており、半導体パッケージでは、プラスチック成形材料、リードフレームのスズのコーティング、リードフレーム合金、および金ボンディングワイヤーなどの多くの均質材料が含まれる、としています。また、RoHS(II)指令のFAQ(2012年12月12日公開)2)のQ9.8で、均質物質の例として「コンピュータースクリーンのプラスチックカバー、ケーブル内部の銅線、はんだ接合部のはんだ部分」が例示されています。
EU RoHSの施行当局者間のインフォーマルネットワークで論議した中から形成された見解としてまとめられた、「RoHS Enforcement Guidance Document(Version 1 issued May 2006)3)」の中で、以下の見解を示しています。
「均質物質の定義として機械的に分離するという概念は合意を得ています。テストされるサンプルは通常の道具を用いて装置から分離されたものに限られます。通常の道具とは試験所で代表的に用いられている道具を意味します。均質物質の定義はRoHS指令を解釈するうえでのガイドであり、分析方法のガイドではありません。適した分析方法があれば用いてもよいであろう。分析目的のためにコーティングを分離するのに化学的方法をもってすることも可能であろう。
多数の層や多数の均質物質からなる小さな構成要素の場合、研磨プロセスによる機械的分離が用いられるが、分析目的のためにこれらの技術を使用してきれいな分離を得ることは必ずしも実現可能ではないかもしれません。」
上記の見解に従えば、RoHS(II)指令で均質物質である、と考えらえる場合に、必ずしも機械的に分離して分析すべきということではなく、分析するために化学的に適切に、それぞれ性質の異なる層を分離または測定できる場合はその方法に従えばよいと考えます。
また、RoHS(II)指令では、16条2項(適合性の推定)で、「試験または計測されるか、もしくは整合規格に則り、評価された材料、構成部品および電気・電子機器については、本指令の要求に適合するものとみなすこととする。」とされています。すなわち、分析試験や整合規格に則り適合性評価がされていれば、制限物質の非含有要求に適合しているとみなされます。したがって、製品を構成するすべての部品や材料に分析試験を行うことは必須ではありません。
さらに、RoHS(II)指令の整合規格EN50581(2012)の序文では、「均質材料のレベルで適用される制限に関して、複雑な製品の製造者にとっては、最終組立製品に含まれるすべての材料について独自の試験を実施することは非現実的である。代替手段として、製造者は適合遵守を管理するために、サプライヤーと連携し適合順守の証拠として技術文書を作成する。このアプローチは、業界と執行当局の両方で認識されている。」と記されいます。
ご質問のアセンブリ基板のはんだペーストおよびはんだレジストに関して、はんだペーストははんだ付けにより生成したはんだ接合部が均質物質となります。また、はんだレジストについても、機械的剥離は難しいのですが、層の厚さは薄くとも均質物質となります。
しかし、均質物質当たりの含有制限物質の濃度の測定は、現実的に無理な場合もあり、自らが測定することは必須ではありません。サプライヤーからの材料であるはんだペーストやはんだレジスの適合判断によるエビデンス(SDS)で問題ないと考えます。
1)http://ec.europa.eu/environment/waste/rohs_eee/pdf/Guidance_Document.pdf
2)http://ec.europa.eu/environment/waste/rohs_eee/pdf/faq.pdf
3)https://www.epa.ie/pubs/advice/waste/rohs/RoHS%20Enforcement%20Guidance%20Document%20-%20v%201%20May%2020061.pdf