電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
最初に指令76/769/EECの24項の第1.2節にリストされている、high-impact polystyrene、transparent/general-purpose polystyreneとABSについて説明いたします。これらの3種類の樹脂はスチレン系樹脂に分類されます。
transparent/general-purpose polystyreneは、透明な汎用ポリスチレンのことで、GPPSと呼ばれています。また、high-impact polystyreneは、耐衝撃性ポリスチレンのことで、HIPSと呼ばれています。
GPPSはスチレンのみの重合体です。GPPSは透明なプラスチックですが、衝撃に弱い欠点があります。この衝撃に弱い性質を改善したのがHIPSです。 HIPSはポリスチレンをポリブタジエンで強化したものです(スチレンとポリブタジエンの共重合体と考えても良いものです。ただし、スチレンとブタジエンの共重合体とは、化学組成が似ていても、分子構造的には異なり、特性も異なります)。また、ABSは、アクリロニトリルとスチレンの共重合体をポリブタジエンで強化したものです。HIPSと比較して、耐熱性、耐薬品性に優れています。
したがって、一般的なプラスチックの分類からすると、技術的にはHIPSとABSは異なるものです(詳細は、例えばhttp://www.psjp.com/whatisps/を参照ください)。
しかし、カドミウムとその化合物の禁止について、指令76/769/EECの第10次修正として出された指令91/338/EECの前文を見ますと、欧州理事会は1988年1月25日の決議で、欧州委員会にカドミウムによる環境汚染を絶滅するための特別な措置を遅滞なく進展させることを勧告しています。すなわち、全てのカドミウムを規制するという基本的な考えが伺えます。
例えば、EUでの具体的な措置としては、オランダの化学品法では、1kg当たり100mg(100ppm)を超えるカドミウムを含むプラスチックあるいは塗料は禁止されています。ここで、プラスチックは一般名が対象になっており、プラスチックの種類は規定されていないと考えた方が良いと思います。また、ご承知のように、RoHS指令では対象物を規定せずに、カドミウムの最大許容濃度は100ppmとされています。
結論として、ABSとhigh-impact polystyrenenは、樹脂の化学組成上は異なりますが、リスクマネジメントで考えて対応する必要があるようです。可能であれば、プラスチック(ABSを含めて)にはカドミウムを添加しない方が良いと思います。