まず、REACH規制での各用語を簡単に整理します。
- 1. 物質
自然状態または製造プロセスによって作られた化合物。安定性を得るために必要な添加物やプロセスに由来する不純物を含むが、安定性や組成を損なわずに分離できる溶剤は含まない。
- 2. 調剤
2種類以上の物質からなる混合物または溶液。一例として合金は調剤である。
- 3. 成形品
1種類またはそれ以上の物質や調剤からなる物体。化学合成物よりもはるかに大きく、最終用途の機能を決定する特定の形状、表面、デザインが与えられている。
REACH規制は、健康や環境に悪影響を与えない物質の上市、輸入、使用を確実にするのは製造者、輸入者、川下ユーザーであるという原則を明確にしています。また予防を原則としており、そのために製造者や輸入者に基本的には「登録」、「評価」、「認可」を行うことが求められています。
- 1. 登録
年間1t以上製造・輸入されるすべての物質はその特性と危険性などを登録する必要があります。また 10t未満の物質は「安全データーシート(SDS)」を作成するための安全データを提出する必要があり、10t以上の物質は「化学物質安全報告書(CSR)」を提出する必要があります。
- 2. 評価
加盟国の有資格者が書類と物質の評価を行いますが、評価の結果、登録者は追加情報の提出などが必要になることがあります。
- 3. 認可
発がん性、突然変異性、生殖毒性をもつ物質と、残留性有期汚染物質が認可対象となります。認可は個々の用途に対して行われます。しかしその適用は、適切な管理がされること、社会経済的な利益がリスクよりも重要であることが示された場合のみとなります。
文面通り年間1t以上製造・輸入されるすべての物質は登録される義務がありますが、調剤に関しては登録の義務はありません。しかし、調剤の製造・輸入者は調剤を構成しているすべての物質が、その用途にあった登録をされており、曝露シナリオにより適切にカバーされているかどうかを確認する必要があります。もし、それらがなされていなければ、その調剤の処方者は供給者に用途を伝えたうえで要求をするか、処方者自身で上記の対応をとる必要があります。
成形品は、その中に1t以上で0.1wt%以上の認可物質を含有する場合は化学品庁に届け出る必要があります。しかし「廃棄を含み、予期できる合理的な使用条件の下であれば人や環境への曝露が防げる」という適切な指示書の作成が可能なのであればその必要はなくなります。また、成形品から放出されることが意図された物質が年間1t以上の場合も登録の必要があります。
第33条(成形品中の物質に関する情報伝達義務)では次のような義務が示されています。解釈については、Q1、Q2、Q6に関連するご質問がありますので参考にしてください。
- ANNEX XIV(第57条、第59条(1))に記載された認可対象物質で0.1wt%を超える物質を含有している成形品の供給者は、その供給者に利用可能であり、成形品の安全な使用に十分な物質の名称などを含む情報を受領者に提供する。
- ANNEX XIV(第57条、第59条(1))に記載された認可対象物質で0.1wt%を超える物質を含有している成形品の供給者は、消費者の要求に対して、その供給者に利用可能であり、成形品の安全な使用を可能にするための十分な物質の名称などを含む情報を受領者に提供する。
情報は、要求から無料で45日以内に提供する。