電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2010.10.29
前回、前々回に続き、これまでEU REACH規制の陰で、動向情報が少なかった台湾と日本の法規制の動向をまとめてみます。
台湾では毒性化学物質管理法で、毒性化学物質による環境汚染および人の健康障害の防止を目的とした規制をしています。同法第17条で表示やMSDSの準備が要求されています。
毒性化学物質管理法および関連法はR.O.C.(Taiwan)Environmental law Libraryのページから入手できます。
MSDSは労工安全衛生法の「危険物および有害物の表示と周知規則」に規定されています。対象となる毒性化学物質は指定されています。
第1類 約70物質
難分解性・生物濃縮性等の作用で環境汚染および人の健康危害を及ぼす物質。
第2類 約90物質
発がん性(IARA 1,2A)、変異原性(Cat 1)、生殖毒性(Cat 1,2)、その他慢性疾患をもたらす作用のある物質。
第3類 約70物質
暴露により直ちに人の健康、生物生命に危害を及ぼす物質。
哺乳動物の急性毒性:経口LD50≦25mg/kgなど。
第4類 約70物質
発がん性(IARA 2B)、変異原性(Cat 2)、毒性データはないが毒化物と類似構造、環境ホルモンの特性を持ち環境汚染と人の健康危害を及ぼすことが科学的に証明された物質。
第1類から第4類にそれぞれ、取扱記録・放出量記録の定期的申告と記録の保存やMSDSの義務などが要求されています。
分類、表示は「毒性化学物質表示および物質安全資料管理弁法」により2008年1 2月31日からGHS準拠の規格(CNS15030)が適用され、2010年1月1日から第一段階として1,062物質が適用されています。
表示とMSDS規則はR.O.C.(Taiwan)Environmental law Libraryの「Toxic Chemical Substances Labeling and Materials Safety Data Sheets Regulations」にあります。
毒化物の情報は、行政院のホームページの「毒化物査詢」から入手できます。
台湾では当局が特定した化学物質について、要求による管理をするという流れです。
台湾の分類表示などは、国連GHSに準拠し国際整合をしています。しかし、既存化学物質の定義やデータベースが整備されていなく、新規化学物質の規制が明確でないという問題があり、既存物質のデータベースの構築作業を行っています。既存物質の定義は、「1993年1月1日から2010年12月31日の期間に製造、輸入、処置や販売した実績のある物質」とし、製造者、輸入者、使用者や販売者などに届出を要求しています。
届出内容は、
などです。
2011年1月1日から既存物質データベースがまとめられます。既存物質データベースができた時点で、2011年6月1日から既存物質データベースに収載されていない物質が新規物質として、「新規化学物質申告制度(New Chemical Substances Notification: NCN)」が適用されます。
新規化学物質申告制度では、「天然物質、天然ポリマー、機械設備の試運転用の化学物質」などが除外されますが、扱い量により届出情報が異なります。
(1)10㎏~100kg <届出>
届出者の基本情報(製造場所など)、新化学物質の英文名称とCAS No.、物理的状態の記
述(物質の外観、色)や保管や輸送の安全取扱情報など
(2)100kg~1t <簡易届出>
基本情報(General Information)、 GHSによる分類と標示、安全取扱情報(Safe Use Information)、ポリマー弁別データ(Polymer Identification Data)など
(3)1t~ <完全届出>
申告者の基本情報(General Information and Identification)、GHSによる分類と標示(GHS Classification and Labelling)、物質の製造、使用および暴露(Manufacture, Use and Exposure)、物理と化学の特性(Physical and Chemical Properties)、生態毒性情報(Ecotoxicological Information)、毒性情報(Toxicological Information)、分析方法(Analytical Methods)、安全使用情報(Safe Use Information)、参考の文献(Literature References)、評価の報告(Assessment Reports)など
既存物質と新規物質では負荷が違います。輸出実績があれば輸入者に既存物質届出(for Existing Chemical Substance Nomination:ECN)を要望することが肝要と思います。
NCN関連情報は、Chemical Subatance Nomination&Notificationの「新化学物質申報」ページにあります。
その他の関連情報は2009年5月15日付けコラムをご参照ください。
化審法は平成21年に大改正され、2段階で施行されます。ポイントは以下です。
(1)第1段階改正 平成22年4月1日 施行
(2)第2段階改正 平成23年4月1日
(3)登録の義務
ⅰ)日本全体1t/年以下
「少量新規化学物質の申出」制度で、予定年間製造・輸入量、化学物質名称、構造式な
どの申出義務があります。
ⅱ)事業者あたり1t/年超~10t/年以下
「低生産量新規化学物質の申出」制度で、新規化学物質の名称、新規化学物質の構造式
または示性式、確認を受けようとする年度(製造・輸入を行おうとする年度)、製造予定数
量または輸入予定数量などの申出義務があります。
ⅲ)事業者あたり10t/年超
「新規化学物質製造・輸入届出書」で、新規化学物質の物理化学的性状および成分組成
や新規化学物質の用途などが届出が要求されます。
(4)一般物質の届出
改正化審査法の中で留意することは、「既存化学物質を1t以上製造/輸入者の届出義務」です。この1tは今年度(平成22年4月1日~平成23年3月31日)の扱い量を平成23年6月30日までに届出る必要があります。
製造数量等の届出対象は、新規化学物質のうち官報にその名称が公示された物質、既存化学物質名簿に収載された物質、優先評価化学物質の指定を取り消された物質です。
届出の製造数量は都道府県別、輸入数量は輸入した国・地域別、出荷数量は都道府県別および用途別に届出を行う必要があります。
用途は、REACHのような複雑ではなく、一般物質は50分類、優先評価化学物質などは280分類です。
一般物質について、都道府県別、用途別情報を法人単位でまとめる必要がありますので、来年6月末までの届出ができるように、今秋から情報収集することが肝要に思えます。
用途分類は、経済産業省の用途分類表にあります。
以下の関連情報もご参照ください。
●化審査法のホームページ
●関連コラム(2009年3月19日付けコラム、2009年6月19日付けコラム)
3回に渡たる連続解説となりました。今秋の動きは大きく、国内、海外の情報を得て、的確な経営判断が求められています。まずは情報収集が課題となります。
(松浦 徹也)