電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2010.10.22
前回に続いて、愁眉の的の海外諸国の法規制の動向をまとめてみます。
(2)RoHS管理規則
以下に経緯を整理してみます。
RoHS管理規則は2段階で施行されています。第1段階は特定有害物質の含有表示義務ですが、第2段階は特定化学物質の電子情報製品への含有制限義務で、対象製品が「重点管理目録」に収載されます。2009年9月29日に第1バッチ(第一批)の「重点管理目録案」が公示され、11月9日を締め切りとするインターネットコンサルテーションが行われました。品目は「携帯電話」、「固定電話」「コンピューター用プリンター」でHSコードも明記されていますので対象製品は具体的です。
しかし、インターネットコンサルテーションの結果は公表されていません。第2段階の施行が気になるなか、2010年5月24日に中国工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology of the People's Republic of China)からRoHS規則の非含有の自己認証に関する「意見」が告示されました。
自己認証は目録収載製品が対象で、工業情報化部の制定手順により、自己認証を認証機構が審査しますが、同時に検査機構による順法評価が行われます。審査を受けて事業者が自主的RoHS規則適合宣言をするものです。第2段階の「重点管理目録」の収載製品に要求されるCCC制度と自己認証の関連に戸惑いを覚えました。
この告示の説明のなかで、7月中旬にRoHS管理規則の改正案を告示し、意見を受けて12月に改正案をWTO・TBT協定による通告するとしています。
この説明通りに、7月20日に中国RoHS規則(電子電気製品の汚染抑制管理規則)の改正案(討論稿)が発表されました。
改正案第21条(有害物質制限使用適合性判定)で、「電子電気製品汚染抑制標準達成製品目録におさめた電子電気製品は、国家の推進する電子電気製品汚染抑制認証制度の要求に照らし、認証を行う。」として、「電子電気製品汚染抑制標準達成製品目録」収載製品は、従来のCCC制度でなく自己認証制度が適用されます。
CCC制度は事業者の申請を受けて、認証機関が認証しますが、適合性試験は国家標準により試験所が行います。EUのCEマーキングに類似した内容です。自己認証もCCC制度の類型に思えます。現行のCCC制度適用製品はwebサイトでもご覧になれます。
昨年の重点管理項目案では、公示後10カ月で発効としていました。現行RoHS規則は公布後1年で発効しました。改正EU RoHS指令案の発効は公布後3年-5年ですから、中国は短い準備期間です。12月に予定されているTBT通告改正案が気になるところです。
これについては2009年10月23日付けコラム、2010年7月2日付けコラム、2010年8月13日付けコラムをご参照ください。
TSCAには「新規化学物質の登録」、「登録化学物質の新たな用途使用の届出」と「登録物質データ(TSCAインベントリ)の更新」などの義務があります。TSCAインベントリには約8万3,000物質が登録されています。
アメリカは基本的にはTSCAインベントリ非収載物質を新規化学物質としてTSCAで管理しています。既存物質(TSCAインベントリ収載物質)は、HPVC注)(高生産量化学物質)プロジェクトで、HPV (100万ポンド/年)2,750物質、続いてMPV(2万5,000ポンド/年)4,000物質へと評価を広げています。(*1ポンド=0.454kg)
注)OECD加盟国2カ国以上でおのおの1,000t以上が生産されているか、1カ国で1万t以上が生産されていること物質について、化学品の試験と評価を行う。
HPVとMPVを合わせても6,750物質です。TSCAインベントリの更新規則(IUR)があり、年間2万5,000ポンド(約11t)以上の製造(輸入)物質について、5年ごとに数量、用途に加えて化学物質、混合物の環境および健康影響に関する既存データ等の定期報告義務があります。しかし、非IUR物質が7万5,500物質あり、これがリスク評価されないままになっています。
現行TSCAにも既存物質のリスク評価をする上で制約があります。
この条項からは、著しいリスクが明確でないとリスク評価ができなく、また、経済的影響を考慮することが求められますので、なかなか執行できない懸念があります。
これらが問題となりTSCA改正に向かっています。当初のTSCA改正はChAMP(Chemical Assessment and Management Program)として進められ、TSCAインベントリをリセットする方針でした*1)。
EPA Lisa P. Jackson長官は2009年9月29日に、ChAMPから既存化学物質管理の強化策に方針を変更しました*2)。
基本対応は「公衆関心を引き起こす化学物質の特定」「迅速な評価、危険有害性の決定」「適切な行動の開始」で、Bisphenol Aなどが対象となっています。
TSCAの改正も動いています。改正動向はコラムで紹介されているところですが、H.R 5820(2010.7.22 下院法案)では以下の2点に留意する必要があります。
改正案の審議中で公布までは2、3年かかると言われています。11月の中間選挙結果により、内容は変更されると思います。大きな流れは変わらないと思いますが、中間選挙も注目する必要があるようです。このように、アメリカもEU REACH規則並の義務が生じますので、情報収集と対応の検討が必要になっています。
2010年8月27日付けコラム、2010年9月3日付けコラム、2010年9月10日付けコラムをご参照ください。
台湾既存化学物質届出制度、新規化学物質申告制度及びや一般物質であっても届出が要求される化審法の解説は次回とします。
EU RoHS指令の改定についての環境理事会が10月14日に開催されると前回ご説明しました。アジェンダおよび暫定議事録にはRoHS指令に関する事項の記述がありません。
議会の採択を得て正式に審議するとも思われます*4)、*5)。
*1)http://www.epa.gov/champ/index.html
*2)http://www.epa.gov/oppt/existingchemicals/index.html
*3)http://thomas.loc.gov/cgi-bin/query/z?c111:H.R.5820:
*4)http://www.consilium.europa.eu/ueDocs/cms_Data/docs/pressData/en/envir/117055.pdf
*5)http://www.consilium.europa.eu/uedocs/cms_data/docs/pressdata/en/envir/117097.pdf
(松浦 徹也)