電子・電気部品に関する欧州の環境規制(RoHS指令)について紹介
2007年に施行されたRoHS指令は、2011年に大幅改定されて現在はRoHS(II)指令として運用されていますので、現在問題なく販売されている貴社製品はRoHS(II)指令に適合されているものだと考えます。
ご質問にある2019年7月とは、2015年6月に官報で公布された「制限物質について2011/65/EU(RoHSII)の付属書IIを改正する指令(EU 2015/863)」の適用開始日であり、同指令の2条1項及び附属書IIで以下のように示されています。
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) | Bis(2-ethylhexyl) phthalate(DEHP) |
フタル酸ブチルベンジル | Butyl benzyl phthalate(BBP) |
フタル酸ジブチル | Dibutyl phthalate(DBP) |
フタル酸ジイソブチル | Diisobutyl phthalate(DIBP) |
2019年7月22日 | カテゴリー8(医療機器)およびカテゴリー9(監視制御機器)を除くすべてのEEE |
2021年7月22日 | 体外診断用医療機器を含む医療機器産業用監視および制御機器を含む監視および制御機器 |
貴社の製品がカテゴリー8、9に属するものではなく、上記の4種類のフタル酸エステルの非含有が確認されていなければ、ご理解の通り2019年7月22日以降の上市は指令違反となります。これまでの評価に加えて、名称・略称による誤認にも注意をしたうえで新規規制物質への評価を実施する必要があります。
RoHS(II)指令の適合性確認は、指令の規制内容は型式認定のように一度クリアすればそれでよいものではなく、個々の製品の上市の都度に適合を確認することなります。
「上市」は「市場で利用可能となる日」とされています。具体的には製品を輸入者に引き渡す通関日ではなく、輸入者から卸売業者や消費者などに引き渡される時点になります。その時点で最新の指令など適合していることが必要になります。
すなわち、通関時にその時点で適用されている指令などの法規制のすべてに適合していることに加えて、通関後に輸入者(現地法人や商社など)が在庫をしている期間中に指令などが改正施行された場合には、在庫品の販売時にその日に適用される指令などに適合していなくてはなりません。在庫品の販売時に当局は立ち会っていませんが、企業の社会的責任で順法が求められています。このあたりの順法感覚は日本とは若干差異があるようです。
生産者は指令に適合した製造を行い、CEマークを表示することはもとより、原材料・サプライヤーの変更などがあればその都度順法の確認を行うなどの責任があります。その責任の下に製造されたものしか「上市」できないわけです。
なお、フタル酸エステル類についてはち、これまで当コラムなど取り上げて解説しています。
2018年2月23日からの「フタル酸エステル類の解説(1)基本知識と用途、市場」、「同(2)フタル酸エステル類の分析方法」、「同(3)フタル酸エステルの簡易分析」、3月23日の「フタル酸エステル類の規制関連のFAQ」、7月6日の「フタル酸エステル類の混入について」などを参照ください。